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角谷HTML化計画

「むずかしく考えることはない」と、偉そうに葉巻を振りまわしながら、トレヴィラヌスはいった。「ガリラヤの太守がじつにみごとなサファイアを持っていることは、みんなが知っている。何者かがそれを盗むつもりで、間違ってここへ入ったんだ。ヤルモリンスキーが起きていたので、泥棒は殺さざるをえなかった。どうだね、これで?」
「そのとおりかもしれません。しかし、おもしろくはないですね」と、レンロットは答えた。
J.L.ボルヘス『死とコンパス』(『伝奇集』収録)

2011-02-18(Fri) [長年日記]

■1 Developers Summit 2011で王様のスープをごちそうになった

私にとってのDevelopers Summit、いわゆるデブサミは昨年の2010が最終回だった。「私はDeveloper Summitという名の王様のスープの石」としての役割を終えたから。このエントリでも念のため補足しておくと、「王様のスープ」は中埜博さんの持ちネタで、石のスープの民話のこと。この日記の読者諸賢には『達人プログラマー』の冒頭に出てくることでお馴染のアレ。

で。今年は「おいしいスープをおすそわけしてもらう側」として呑気に参加したかったんだけれど「全力で現状維持」のとっとこ信太郎につき、1日目の午後、会期の25%しかデブサミの「空気」は吸えず*1。とはいえ、この程度の関わりかたでも、滋味に富んだ王様のスープを味わた。私の観測範囲に限っても、今年は去年までよりも素敵な石と、おいしそうな野菜や肉がゴロゴロ入った王様のスープになっていたと思う。ごちそうさまでした。

なかでも個人的なお気に入りは、今年のデブサミでは4年前に自分が腹をくくった場所からはじまったひとつ流れとして同僚である@fkinoが腹をくくってからの話の中間報告をしてくれたこと(これについては次のセクションで補足)。*2

この@fkinoのスライドの最終レビューを初日にオブラブのブースでやったときに、私はあらためて自分がもう1回、腹をくくらねばならないことを見つけた(と思う。続きは上野でやろう)。……だから来年は、とっとこ信太郎じゃなく、王様のスープをおなか一杯いただけるようになっていたいなと思ってる。ただ、ひとつ気になっていることは、デブサミが「10 年計画のプロジェクト」だという理解が正しければ、来年は「Final Developers Summit(as we know it)」なの?

繰り返しになるけれど、ごちそうさまでした。

「17-E-7】デブサミオフィシャルコミュニティから選出のLT大会2011」の冒頭で @kohsei にイジられた件

"デブサミのお母さん"である@kohseiに「コミュニティのLT」で、@t_wada, @papanda, @fkino と一緒にmentionしていただいてたいへん光栄である。えへへ。ただ、どこまでメッセージが伝わったのか、石ころだった身からは少し心配なので、デブサミ2011アドバイザーという立場から2点ほど言っておくか(キリッ

ひとつ目。@fkino を引っ張ってきたのは勤務先のゴリ押しとかアドバイザーが手を回したとかではありません。今年のコンテンツ委員の会議で決めたそうなので、そのへん誤解なきよう。

ふたつ目。去年書いたことをあらためて引用しておく:

今年(引用注:2010)のデブサミでは、自分が登壇したセッション以外でもいくつかのセッションで自分の名前を出されていた。こんなに光栄なことはない。

とはいえ、じっさいにその場に居合せたりするとやっぱり恥ずかしいし「そんなに大層なもんじゃないですよ……」と思ったり言っちゃったりするんだけど(だって本心なんだから仕方ないじゃんね。思想・良心に自由を!)、そうするとそれはそれで「お前がそういうことをいうのは奢りだ」とか「余計に萎縮する」とかお叱りをいただくことも少なくない。でも、今日わかった。私は、石のスープの石だ。石だから、やっぱり大したことはないんだ。でも、楽しそうに石が煮られているのを見て、そこに足りない野菜とか肉をいろんな人たちが持ち寄ってくれるようになったんだ。そういう意味では私はすごい。すごいけど、でも石だからすごくないんだ。そういうことだ。

そういうことなので、私はすごい。すごいけど、でも石だからすごくないんだ。野菜は誰だ。肉は誰だ。ひょっとしたら今年参加した皆さんは何度か耳にしたかもしれないけれど――それは、目黒雅叙園に足を運んで同じ空気を吸った、ustを視聴して同じものを観た、Twitterのタイムラインで流れるテキストを眺めていたみんなだ。次は君の番。It's Your Trun NOW。4年前から言ってたわー。

私は、Developers Summitという名の王様のスープの石だった。

*1 今日はTwitterのタイムラインで雰囲気を少し感じることができた。

*2 DevLOVEもここから始まった、またひとつ別の流れだと思うのだけれど、ここでは言及しない。ミスチーフ。メイヘム。ソープ

■2 スライドづくりのパターン候補: Drop Your Last 2 Slides

3回以上発見したからこれはパターンだと思うのでアレグザンザー・フォームで書きたいけど眠い。文 章も練れてないけどdumpしとく。

Drop your last 2 slides. Just the final words. It's cleaner.
-- Shintaro Kakutani

Drop the "the".

(画像はイメージです(そりゃそうだ)。ぼくのプラダのスーツはクリーニング中です)。

あなたのスライドの最後に次の2枚があったらすぐに削ってしまおう:

  • ご清聴ありがとうございました
  • なにかご質問は?

最後のこの2枚を削ったら、最後に残る1枚のスライドはどんなスライドだろうか? そのスライドは何にするのがいいだろうか?

講演が始まるまでのあいだ、一番長く写しだされているのは(たぶん)表紙のスライドだ。じゃあ、講演が「終わった」あとに一番長く写し出されているスライドは? (たぶん)最後のスライドだ。聴衆が会場から出ていくときに最後に見ることになるスライドが、最後のスライドだ。たぶん。

講演後のやりとりの時間の長さや、あなたのプレゼンスタイル(たとえば1回の講演で80枚以上のスライドを使うようなスタイル)だとしたら、講演時間中を通じてもっとも長い時間、会場に滞留しているスライドになるかもしれない。幸運にも聴衆からの質問があったら、質問者が話してるあいだ、あなたが質問に答えているあいだ、会場に写しだされているのが「最後の1枚」になる。私なりの表現をするならば、プレゼンテーション資料という「背景画像集」のなかで一番長く背負うことになるかもしれない1枚が「最後の1枚」なんだ。

だったらそこには、あなたの講演で、聴衆にいちばん見せたい言葉を載せるのがいい。一番印象的な写真を添えられるなら添えよう。

その写真にはあなた自身の「物語」と結びついた一枚であればなお良い。自分で撮った写真。友達や家族に撮ってもらった写真。理由があって気に入ってる写真。flickrで検索して見つけた写真とか、iStockPhotoやFotoliaで買った写真でもいいけれど、なぜその写真を買ったのか、あなた自身の物語がないと、それは1024x768ピクセルの箇条書きの先頭画像でしかない。

最後の一言は、自分で考えたフレーズでもいいし、引用でもいい。ただし、引用するなら単純にググって見つけた名言じゃないほうがいい。そのことばを引用する理由だけでライトニングトークできそうなぐらいあなたの「物語」と結びついている一言なら最高だ。

削ってしまったスライドに書いてあった、聞いてくれたことへのお礼や質疑の呼びかけなんて、口頭でやればいいんだ――ただし、何事にも例外はある。MatzのRubyConf2010の基調講演の最後の1枚は「Thank you!」だった。でもこの「Thank you!」は、ものすごく重要な「Thank you!」で、こんなに感動的な「Thank you!」って書いてあるスライドはないよね、と @a_matsuda と話していたのだった。 閑話休題。具体例を示します。私の例:

ふつうのシステム開発〜Rubyを活用した受託開発をアジャイルにするためのパターンの紹介

20110218-1rpfbx745trgfcqnm7q89fh8i4.jpg

ふう。文体を戻そう。話すと長くなるので解説はナシ。

去年から、デブサミでは発表するのに慣れてない人のスライドづくりのコンサルというかコーチというか、アドバイスをいくつかやっている。以下は今年のクライアントさまの事例をご紹介 :)

nawotoさま: 今そこにあるScrum

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スライド構成全体を監修させていただきました。「今そこにあるScrum(Clear and Present Scrum)」というタイトルを考えたのオレオレ。

fkinoさま: これからの「アジャイル」の話をしよう ――今を生き延びるための開発手法とスキル

20110218-e4sb3wpcfp4rssm4hpc17nr2p5.jpg

「最後のスライド」を何にするかはレビューの場では決めてなくて「考えててみたら?」というサジェスチョンまでだったんだけど、いい写真をもってきましたなあ。スライドづくりの観点からは上下の黒い帯と、縁取りのぼかしが無かったら完璧ですね。

私ならこうするかなあ:

20110219-jgmmmk6uxxmr8w2b3dtiqrscsr.jpg

なぜこうするかは別のパターンとして話さないといけないんだな。ランゲージすごい。たしか『プレゼンテーションZen』にも載ってた気がするけど。私は岡本太郎の本から学んだ。

デブサミ2010のスライドづくりでの監修実績

ついでに去年お手伝いしたセッションも自己顕示欲全開でご紹介。

  • デブサミ2010: 実践Cucumber (@moro)
    • 構成を監修しました。スライドづくりはそんなにアドバイスしてないと思う。ソースコードのフォントのことは言ったかも(monospaceを使ったほうがいいよ、とか)。ああそうだ。keynoteで色付きソースコードをつくる簡単なやり方は以外に知られてなかったっぽいからこんど書こう。
  • デブサミ2010: SIerのこれからのソフトウェアを創る(@papanda)
    • 構成を監修しました。スライドづくりは目にあまるところぐらいしかアドバイスしてないかな。色づかいのコントラストのこととか、行間は0.7、とかそういうのはアドバイスしたと思う。PowerPointはよくわからないです。

というわけで、私でよければスライドづくりの相談をしたいなー、と思われるかたはお気軽にお声かけください。気がむくやつは無料で、そうじゃないやつは応相談。どうぞご用命いただきますようお願いもうしあげます ;-p

2011-02-19追記

kdmsnrにおしえてもらった適切なカットの画像に差し替えた。

本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
fkino (2011-02-20(Sun) 16:49)

私も一度そうやってみたんですが、端のほうの人が切れてしまうんですよね。あのスライドは、私の中では全員を入れたいというフォースが強かったので、あえてこうしてます。<br>今度、全社員で写真を撮るときは縦横が 3:4 の比率になるように並びましょうww

かくたに (2011-02-20(Sun) 17:33)

その配慮はすごくよくわかるけど、スライドとしては切ったほうがいいと私は思います。RubyKaigi2010の集合写真のときにさんざん悩んだから。permalinkをつける、というのが私の落としどころ。弊社の30周年記念写真にpermallinkがないのだとしたら残念ですねい。この話は別のパターンだなあ。あきらかに。

かくたに (2011-02-20(Sun) 17:37)

fkinoの判断がまちがってるとかいうつもりはないし、私がただしいというつもりもないです!ねんのため。

fkino (2011-02-20(Sun) 17:55)

なるほど。コンサルしていただいて、ありがとうございました ;)


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