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Webサイトとは「つい、うっかりの存在論」である

角谷HTML化計画

「むずかしく考えることはない」と、偉そうに葉巻を振りまわしながら、トレヴィラヌスはいった。「ガリラヤの太守がじつにみごとなサファイアを持っていることは、みんなが知っている。何者かがそれを盗むつもりで、間違ってここへ入ったんだ。ヤルモリンスキーが起きていたので、泥棒は殺さざるをえなかった。どうだね、これで?」
「そのとおりかもしれません。しかし、おもしろくはないですね」と、レンロットは答えた。
J.L.ボルヘス『死とコンパス』(『伝奇集』収録)

2004-03-30(Tue) [長年日記]

■1 MDAと鷗(かもめ)鳥

「ご覧!」かれは叫びました。「鷗だ! ずいぶん陸の奥まで飛んできたな。かれらはわたしの驚きで、わたしの心を騒がす種なのだ。わたしはペラルギアに来るでは、生涯で一度もかれらに出会ったことがなかった。ペラルギアで、船を相手の戦いに赴こうとする時わたしは空中で鳴く声を聞いた。その時わたしははたと立ち止まって中つ国の戦いを忘れた。悲しげに鳴くその声がわたしに海のことを語りかけたのだもの。海! ああ! わたしはまだこの目で海を見たことがない。しかしわが種族の者ならばだれの心にも奥底深く海への憧れがひそんでいる。これをかきたけることは危険なのだ。あなあわれ、鷗鳥よ! 橅(ぶな)の木の下でも、楡の木の下でも、わたしは二度と心の平穏を味わうことはないだろう」
——『指輪物語/王の帰還(上)』


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