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角谷HTML化計画

「むずかしく考えることはない」と、偉そうに葉巻を振りまわしながら、トレヴィラヌスはいった。「ガリラヤの太守がじつにみごとなサファイアを持っていることは、みんなが知っている。何者かがそれを盗むつもりで、間違ってここへ入ったんだ。ヤルモリンスキーが起きていたので、泥棒は殺さざるをえなかった。どうだね、これで?」
「そのとおりかもしれません。しかし、おもしろくはないですね」と、レンロットは答えた。
J.L.ボルヘス『死とコンパス』(『伝奇集』収録)

2009-01-28(Wed) [長年日記]

■1 デブサミ2009:価値あるソフトウェアを提供し続けるための「開発プロセス」のみどころ

(この日記は1/31に書いてます)

前口上

事例セッションをすべて確定させるまでにいろいろ難航してしまったこともあって、みどころを書くのが遅くなってしまった。 ようやく「みどころ」を書きあげたものの、当初公式サイトに送ったものは長くなりすぎてしまって、結果としては簡約版が掲載されている。ここは自分のサイトなので字数制限もないので、当初のものに近いかたちでみどころ――というか、コンテンツ委員として「開発プロセス」トラックをどう考えているかをもう少しくわしく書いてみたい。もっと早く書ければよかったんだけど、いろいろあるんだよね。私の本業はイベントのプロモートじゃないし……。

「開発プロセス」トラックのみどころ(ディレクターズカット版)

「開発プロセス」は今年のデブサミ2009のテーマである「つなぐ、つながる」という言葉ととても相性が良いです。そもそもソフトウェアの開発プロセスは「なにをつくるか」というビジネスの立場と「どうつくるか」というテクノロジの立場との間に橋を架ける――「つなぐ」存在です。今年の開発プロセストラックでは、それ自身が「つなぐ、つながる」ものである開発プロセスが「つなぐ、つながる」ものという切り口でセッションを用意しています。

最初のつながりは「過去と現在」です。これは【12-A-1】で萩本順三さんに「開発プロセスの心」と題してお話いただきます。

次のつながりは「理論と実践」です。開発プロセスは現場で使われてはじめてビジネスとテクノロジをつなぎます。今回はビジネス側からの視点を中心にした事例セッションを3つ用意しています。「【12-A-2】ケーススタディ:不景気と戦うシステムインテグレート」では「低コストで持続可能な開発」を、「【12-A-4】Eclipse-Way :分散アジャイル開発のためのプラクティスとその事例」では「大規模・分散開発」を、そして「【12-A-5】ユーザー企業責任で25サイトをアジャイルに開発」では、パートナー企業との協業を前提としたユーザ企業が、開発するシステムのビジネス価値を高めていくための取り組みを、、それぞれ事例を通じて紹介していただきます。

ですが、ビジネスの視点は片側からのものでしかありません。開発プロセスをうまく回していくためには、テクノロジとそれを使う人とのつながり――技術的卓越の追求も欠かせません。「【12-A-6】オブジェクト指向エクササイズのススメ」では「人とテクノロジ」のつながりについて語っていただきます。21世紀の開発プロセスに、オブジェクト指向的な考え方は欠かせません。「北風が勇者バイキングをつくった」

それから、コンテンツ委員である角谷は「【12-A-3】時を超えたプログラミングの道への道」で、ひとりの開発者と開発プロセスとのつながりについてお話しします(このイベントはデベロッパーズサミットですから)。

そして、トラック最後のセッションはパネルディスカッション「【12-A-7】『使う』と『作る』がつながるシステム開発」です。開発プロセスのつながりの未来を、SIのさまざまな面を経験されたパネリストの皆さんと一緒に考えたいです。パネリストがSI業界に偏っているとは思いますが、デブサミの客層的にはこれで良いと思っています。このパネルでは予定調和的なオチは用意していません。

開発プロセストラックの構成には、1日どっぷり開発プロセストラックにつかる皆さんはもちろん、興味があるところだけ「つまみ喰い」される皆さんにも、開発プロセス自身とそれを取り巻くつながりについて考え、行動するきっかけになってほしいというコンテンツ委員の願いを込めています。

どうぞご利用ください。

「残席僅か」フラグが立っていないセッションについて捕捉

まず、【12-A-5】ユーザー企業責任で25サイトをアジャイルに開発」。これは個人的に思い入れがある(のに「残席僅か」フラグが立ってない)。

デブサミの準備の一環としてコンテンツ委員である私は次のようなアジャイル開発の事例を探す旅に出たのだった:

  • 完全内製ではないユーザ企業が、
  • 自社システムのビジネス価値を高めるために、
  • アジャイル開発の考え方を自分たちの現場に適用させる試みを組織的に
  • 年単位(こんかいの事例では3年)で取り組んでいる

当初はすぐ見つかると思ったのだけれど、なかなか講演依頼を引き受けていただけるところまでたどり着けなかった。もうだめかも……と思っていたところに快諾いただけたのがリクルートさんでした(これも半ば押しかけるようなかたちで依頼した)。今回の事例が唯一無二の正解というつもりはないけれども、自社のビジネスの根幹を真剣に考えて組織的に実践したひとつの事例として、発注者/受注者双方にとって考えるヒントは満載のはず。

それから、「【12-A-2】ケーススタディ:不景気と戦うシステムインテグレート」も残席僅かフラグが立ってない。FileMakerはプロプライエタリ製品だけれども、低コスト化、セルフビルド、開発の持続可能性といったテーマは開発のプロセスを考えるうえでは今後ますます重要になってくる視点だと思う(私じしんが何かを語るには3年以上早いテーマ)。

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